実例紹介
1日“留学”体験で家族形成に対する漠然とした不安を解消
実証事業者:特定非営利活動法人manma
ポイント!
- 共働き・子育てする家庭に訪問する「家族留学」で実例を体験
- 多様な家族像や仕事と家庭の両立像を知る
- 人生設計が多様化する中に、幅広い実例を紹介
特定非営利活動法人manmaでは、ライフステージのうち結婚や出産といった家族形成初期のイベントに対する支援を行っている。最大の特徴は、実際に共働きや子育てをしている家庭を訪問する「家族留学」の事業を手掛けている点だ。実証事業では、企業や自治体、大学において、家族留学やライフデザインセミナーという形で多様な家族像の在り方を紹介した。受講者の多くでライフデザインの重要性について意識が高まり、中には、家族形成への意識変化や私生活の見直しを通じて就業上のパフォーマンス(労働生産性)向上につながる結果もみられたという。
ロールモデルを提示
manmaの「家族留学」は、共働きや子育てに対して漠然とした「不安」を抱える人たちに、実際の家庭に足を運んでもらい、家族形成に対してヒントを得てもらうことに狙いがある。近年、働き方とともに、人生設計も多様化している。専業主婦家庭で育った人は、共働きの下での子育てに不安を持っている人も多い。manmaの越智未空代表理事は、事業の狙いについて「結婚や出産を促したいわけではなく、インターネット上では結婚や出産にネガティブな情報や、自分自身に重ねにくいキラキラした理想的な情報ばかりが目につきがちになる。実際の家庭に触れてもらう機会を提供したい」と話す。参加希望者は、manmaの担当者との30分~1時間程度の面談で、希望に近い家庭環境の“留学”先家庭を訪問する。家族像は、育った家庭に影響されやすい。「核家族化や少子化で、ロールモデル(手本となる)事例が減っている。年代の近い家庭に触れることで、子育ての大変さだけでなく、楽しみや喜びがあることを知ってもらう」と、越智さん。
大企業でも意識変化
実証事業では、大手企業へのライフデザインセミナーも実施した。子育て中の社員の事例トークやワークショップを通じ、20~30歳代の社員に家族形成への不安や悩みを共有してもらった。参加者から「転勤がある中での両立への不安」や「配偶者のキャリア事情の影響」など社内セミナーでは共有しづらい内容も話題に上った。セミナー後のアンケートでは、受講者の一部では、仕事のパフォーマンス(労働生産性)や組織へのエンゲージメント(愛着)に好影響がみられたという。26歳女性からは「自分で決めつけず、積極的にいろんな経験をした人の話を聞いてみたほうがよいと思った」との声も寄せられた。ライフデザインは、転勤といった仕事上の事情や親族関係などは人によって違ううえ、時間とともに変わっていく。越智さんは「職場が個人の問題と片付けず、ライフデザインを伴走して支えていくための支援サービスを展開したい」と話す。