実例紹介

リアルな人事制度を組み込んだボードゲームで5年後を疑似体験

実証事業者:株式会社NEXERA

ポイント!

株式会社NEXERAは、企業向けに社員のキャリア形成をサポートするボードゲームを企画・開発し研修を実施してきた。今回の経済産業省の実証事業にあわせ、キャリア形成に不可分なライフデザインという視点を充実させたボードゲーム「CAREER MAKER for Life Design」を開発し、15社以上で展開した。5年後の理想のキャリアや私生活の充実度を設定し、ロールプレイ(疑似体験)する。企業ごとにそれぞれの人事制度や福利厚生の内容をゲームに組み込み、リアルな選択肢で社員がライフデザインを自分ゴトで考える機会を与える。人的資本経営への注目が集まる中で、研修として取り入れた事業者からは「ワークライフバランスのモヤモヤ感を払拭できた」という声もあったという。

NEXERAの研修の様子(左)とボードゲームの一例

ゴール設定はそれぞれの理想

ボードゲームでは、ゲームを始める前に、研修の受講者がそれぞれの5年後の理想を設定する。「仕事」のほか、結婚や子育てを想定した「家族」、心と体の「健康」、そして趣味などの「余暇」の4項目。各自がパラメータで理想を「見える化」する。受講者は理想に向けてボードゲーム上の歩みを進める。1年目、2年目…。ボード上に設定された“分岐点”で仕事や私生活に関するイベントカードを開き、選択する。“ライフデザイン”の疑似体験だ。ゲームは、各企業の人事制度や福利厚生の内容に合わせ、転勤やリスキリング(学び直し)、休暇、育児休暇などを選択できるようにして、より現実に近く自分ゴトで考えてもらう。ボードゲームの前後には、合理的意思決定のあり方などの基礎的な座学やワークショップも行う。NEXERAの泉野航平・取締役は、「上司や先輩の真似では自分の価値観に合わない時代になった。自分の理想を考えてほしい」と話す。研修先の企業とは面談も行い、ゲーム開発担当者が課題を落とし込む。介護・保育事業者向けには、一つの業務を長く担当することによる負担を考えて他業務への担当替えや、ダブルワーク(兼業など)などをボードゲームの選択肢に組み込んだという。

人的資本経営の後押しにも

「ゲームを通じた疑似体験は、参加者の意欲が高まりやすく、コミュニケーションも生まれる」と泉野さん。選択の結果で増減するパラメータに、参加者からは「自分が目指すワークライフバランスを実現できる選択をしていきたい」(通信サービス)や「社内制度もフル活用できていないので、積極的に情報を拾いたい」(人材サービス)といった意識が芽生えた。人事や社員教育の担当者側も「(キャリア形成とワークライフバランスに対する)社員のモヤモヤ払拭につながった」と話す。人材を成長の原動力と捉える「人的資本経営」が企業に広がる中で、キャリアを考えるうえで不可分なライフデザインを後押しするサービスを目指している。